家族ごっこ

ちんかめ

昔、父の再婚についていった女は継母にいじめられ、夢も希望もなく家政婦のように、奴隷のように過ごしてきた。幼いころからずっと。父は娘をかばってはいたが仕事が忙しくあまり家に帰る事はなかった。女も虐げられている自分を父に見せることはしなかった。
そして成人したころ心の支えとなる男を見つけ早々に結婚した。
自分の家庭を守るため必死に働き、必死にすごした。少なくとも継母のそばにいるよりは幸せだった。
そして20年が経ち、女は40歳をゆうに超え、子供も成人した。
しかし女の父は死んでいた。ガンと2年戦っての結果。
女の夫は本当の母にあわせてあげることが、これからこの女の支えになると考え、探し、名古屋で見つけた。
初めて会った実母は80を超える老人。40数年と言う月日がたっての再開は女にとって不快なものでしかなかった。
老女から出てくる父親の悪口。
尊敬していた父親を非難する言葉。
早々に席を立ち二度と会わないと誓った。
夫はそれでも実の母親だからと女の老女の息子と話をつけもう一度逢わせようとしている。
果たして血の繋がっている、それだけの母親が必要だろうか?
女の父親は生前娘には会わせないと突っぱねていた。
尊敬し、愛した父親が守ろうとしたものを破ってまで支えを求める必要があるだろうか?
単なる偽善、おっせかい。私はそう思った。老女に会うことはどちらかが胸のつかえを失くしたいだけじゃないのか?
今更なにを。